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ワーキングプア
ロングテールでもっとも背筋が寒くなる分野は、仕事だ。クリス・アンダーソン著『ロングテール』によれば、ロングテールの3つの追い風は「つくる」「世に送り出す」「見つける手助けをする」だそうだ。
A=生産手段の民主化、B=流通手段の民主化、C=需要と供給の一致。それぞれ、労働市場においては、A=誰にでもできる仕事。B=低賃金の派遣会社。C=企業のコストダウン。と、言い換える事ができる。先日大阪あいりん地区へ44平方メートルに3300人が戸籍登録という記事をみて取材に行った。あいりん地区はもともと「釜ヶ崎」と呼んでいたのを、60年代にメディアと行政でそう呼びならわすようになったものだ。
西成区東北端、JR環状線の西側。約800m四方の中に、宿屋をひっくり返してドヤと呼ばれる簡易宿泊所が密集し、約3万人の労働者が暮らしている。出入りは激しく、住人の実数はつかめない。
どれほど字数を費やしても語りきれないほど入り組んだ場所だが、ポイントはドヤ街とは別に「寄せ場」という一般名称も持っていることだ。寄せ場とは、労働市場のこと。『日本近代技術の形成』(中岡哲郎)を読むと、「明治一年十一月清水谷西成郡一小区吉右衛門肝煎地内に救恤(きゅうじゅつ)場設置」とでてくる。救恤場とは「貧しくて明日の生活にも困る人びとに応急の救済を行う場所です」。
それが「大貧院」「授産所」と名を変え、やがて勧業場に発展していく。貧しい人々に施しを与えるのでなく囚人にさえ「仕事」を与えることによって生きさせるという思想は、五代友厚他当時の政府のお偉方が、西欧に感銘を受けたシステムだったからなのだとういう。オリバー・ツイストみたいな話だ。
釜ヶ崎は、高度成長のさなか炭坑が閉山され大量の労働者が流れ込んで人口が増え、70年の大阪万博では大量の労働力としてあてにされた。テールの逆ヘッド、労働市場における「恐竜の首」だった。手配師がトラックでやってきて工事現場へ労働者を運ぶ「寄せ場」は全国にある。手配師と人夫頭の関係は違法だが、必要悪として各自治体も認めている。
あいりん地区は、なるほど酷い場所だったが、それでも労働運動の結果勝ち取った就労制度があった。3300人が44平方メートルに暮らすという異常事態も、ここでの戸籍を得るための苦肉の策だ。だが、これが全国に広がるとなると……。今や日本の非正規雇用者は1600万人。生活保護に匹敵する「ワーキングプア」が400万世帯に達するといわれている。
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