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また島で会いましょう――人口の8倍が来島する奄美群島、自然を守りながらおもてなし

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Sponsored by 奄美群島広域事務組合

配信期間:2019/1/23(水)〜2/19(火)

九州と沖縄の中間に浮かぶ鹿児島県・奄美群島。2020年夏の世界自然遺産登録を目指す奄美大島と徳之島を含む有人8島から成る。近年、奄美群島への1年間の来島者数が人口の約8倍に当たる82万人に達するなど、人気の観光地として注目を集めている。今後もインバウンド(訪日外国人旅行者)を中心に観光客の増加が見込まれる一方で、対応する通訳案内士やツアーガイドといった人材の育成が課題だ。人口減少・流出という離島であるがゆえの悩みを抱える中で「島の魅力を伝える人」の育成、確保に向けた取り組みの今を追う。

観光で奄美に追い風、環境保全との両立へ

「予約で満室」――。ここ数年、観光客が集中する夏のレジャーシーズンには、宿泊業界からのうれしい悲鳴をよく耳にする。

鹿児島県によると、2017年の奄美群島への入込客は82万5791人。5年連続の増加で、記録が残る1970年以降最多となった。背景には、割高だった航空・航路運賃が国の交付金を活用した施策で軽減されたことや、都市部と奄美大島を結ぶLCC(格安航空会社)の就航などがある。

寄港した大型クルーズ船を歓迎する奄美大島の住民ら

奄美大島では大型クルーズ船観光も好調。18年度の寄港は過去最多の18回(うち外国船籍10回)を予定し、計約2万2千人の来島を見込む。特に台湾からのクルーズ船が増えており、奄美市は1回の寄港がもたらす経済効果を5800万円と試算する。2020年、世界自然遺産登録が実現すれば、候補地2島以外の島々にも波及効果が見込まれ、群島全体で来島者のさらなる増加と経済効果に期待が高まる。

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奄美群島が観光地として人気となっている理由は、なんといっても手付かずの「自然」だ。大陸と分離結合を繰り返した地史があって生物多様性に富み、独自の進化を遂げた生き物もいる。希少種や固有種も多く生息する豊かな自然が最大の魅力となっている。

一方、その人気が高まることで世界で奄美群島だけにしか生息しない希少動物が交通事故に遭うロードキルの発生や森林生態系への影響が懸念される――。自然資源の価値を損なうことなく、また、観光客増加を一過性のものとしないためには、島の自然や文化、保護管理などについての深い知識や外国人観光客に対応できる語学力を備えた人材は欠かせない存在と言える。

「エコツアーガイド」「地域通訳案内士」という仕事

奄美群島で人材育成の取り組みが進むエコツアーガイド。奄美ならではの質の高い体験プログラムを提供できるよう、奄美群島の自然や文化について深い知識を有し、地域の環境保全に責任を持つガイドの認定を目的としたガイド認定制度が17年に設けられた。奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定した「奄美群島認定エコツアーガイド」は現在85人おり、森や海などをフィールドに活躍している。

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エコツアーガイドと同様、奄美の観光分野で今後、活躍が注目されるのが地域通訳案内士だ。旧通訳案内士法では、有償で外国人をガイドするには同法に基づいて国家資格の取得が必要であったが、世界自然遺産登録を見据え、14年3月改正の奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)で奄美地域特例の通訳案内士制度が創設された。群島内12市町村で構成する奄美群島広域事務組合が主体となって、より質の高い通訳案内士育成を目指して16年度から育成研修を実施し、これまでに107人(英語81人、中国語26人)が修了試験に合格。各市町村で登録すれば、「奄美群島地域通訳案内士」としての活動が可能となっている。

※なお、18年1月の通訳案内士法改正により、現在は資格を持たない者であっても有償での通訳案内業務を行うことは可能となっているが、無資格者は「全国通訳案内士」、「地域通訳案内士」及びこれらに類する名称を名乗ることはできないこととなっている。

奄美大島で活動する地域通訳案内士の豊田さん

「通訳の仕事は言葉の橋渡しをすることだと思います。多くの外国人に自分の古里のことを知ってもらうことはとてもうれしいことです」。そう語るのは奄美大島の地域通訳案内士・豊田佳由さん(36)。5年前に宮崎県から帰島後、地域通訳案内士の研修生を募集する新聞記事を目にしたのがきっかけで、「資格だけでも取ってみよう」と応募した。研修は語学や地元学などの知識を身に付ける内容で計54時間。その研修で共に学んだ仲間と意気投合し、英会話スクールの運営や観光パンフレットの翻訳などを手掛ける会社を18年5月に設立した。

豊田さんは「私の人生を変えた出会いだった。もともと好きだった英語が生かせる今の仕事は楽しい」と目を輝かせる。地域通訳案内士として、クルーズ船寄港時の外国人観光客への対応や、島内で開催されるイベント、教室などで外国人が来島した際の通訳を行っている。

そんな中、地域通訳案内士の仕事に関して豊田さんは「地域通訳案内士のほとんどはほかに仕事をしている。副業としては魅力的だが、時間に余裕がないとできない」と語る。インターネットで得た情報を頼りに観光するスタイルが浸透する中、「通訳案内を必要とする外国人観光客がどれだけいるか」と不安視する声もある。地域通訳案内士になった人たちが能力を十分に発揮できる機会は、今後見込まれている外国人観光客の増加に比例して増えていくことが予想される。そういった需要の増加に向けて地域通訳案内士ら育成人材のさらなるスキルアップや、認知度・社会的地位の向上を図る必要がある。

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外国人招きファムトリップ、見えてきたものは?

それらを踏まえ、奄美群島広域事務組合は18年度、「奄美群島育成人材フォローアップ事業」を企画。その一環で、奄美群島内の児童・生徒を対象とした「お仕事体験プログラム」と併せて観光地の誘客促進のために外国人を招いて現地を視察してもらうツアー「ファムトリップ(Familiarization Trip)」が5つの島で行われた。

観光地巡りや体験活動など、各島の特長を生かした2〜3日間の滞在型観光メニューを用意し、国内在住のメディア関係者や駐日大使、外国人留学生などを招待した。ツアーでは、エコツアーガイドの説明を通訳案内士が英語や中国語に訳して外国人に伝えるのが基本的なコミュニケーションの流れ。ガイドと通訳が連携して行う実践的な観光案内を初めて行ったという島もあり、自然や文化に関する専門用語の訳し方や説明に割く時間の配分、外国語の資料の事前準備など、スムーズにツアーを行う上での課題が見つかった。

美しい砂浜での会話が弾んだ奄美大島のお仕事体験・ファムトリップ

今回のお仕事体験・ファムトリップでは、各島で地元の小中高校生の参加を募った。通訳案内士やエコツアーガイドの仕事を知ってもらうほか、お仕事体験を通じて自らの住む島の魅力に改めて触れてもらうことで将来の就業選択の幅を広げてもらうためだ。奄美群島では、高校を卒業するとほとんどが就職や進学で島を離れ、将来、島に帰ってくるのは一握りしかいない。参加した子どもたちからは「島のことを外国人がたくさん褒めていたので誇らしかった」「生まれ育った島について知らないことが多いことに気付いた」「自分も島外の人に島のことを説明できるようになりたい」などの感想が寄せられた。

観光地を巡って徳之島の魅力を紹介するエコツアーガイドや地域通訳案内士

徳之島の地域通訳案内士で組織する団体・結ランダー徳之島代表の福本幸代さん(32)は「島の子どもたちが海外の方々と触れ合えたことや、エコツアーガイド、地域通訳案内士のことを知ってもらえたことが大きな収穫」と振り返り、「世界自然遺産登録に向けて、島民とビジター(観光客)が困ることがないよう、受け入れ態勢を整えていきたい」と意気込んだ。

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「また来たい」は「また会いたい」

「素晴らしい自然に感動した」「日本とハワイ、両方の感動を味わえる場所」――。手付かずの自然や原風景、島唄や郷土料理、奄美黒糖焼酎といった文化、「島時間」とも言われるのんびりとした奄美ならではの雰囲気を、ファムトリップで訪れた外国人たちは高く評価した。奄美での日常は都会や海外の人にとっては非日常。それこそが人々を引き付ける魅力であることは言うまでもない。

徳之島・金見集落の女性たちが用意したおもてなし料理に喜ぶお仕事体験・ファムトリップの参加者

その中でも、外国人が最も強調したのは、奄美の人々と出会った喜びやもてなしを受けての感動だった。「いつか島に帰ってきてくださいね」「また必ず来ます」。ファムトリップの最後に、通訳案内士やガイドらと再会を誓う光景が各島で見られた。人との触れ合いも重要な観光資源だ。

与論島で干潮時の沖合に出現する真っ白な砂浜「百合ヶ浜」

奄美群島の人々の営みは古くから海とともにある。物、情報、文化――。海からもたらされるそれらは、海のかなたの理想郷「ネリヤカナヤ」からの贈り物であるとも信じられてきた。人もしかり。奄美に暮らす島人(しまっちゅ)は来訪者を大切な存在として迎えてきた。人が人を呼び、互いを知って成長しながら、幸せを紡いでいく――。先人たちの生き方は地域通訳案内士やエコツアーガイドが目指す姿と重なる。世界自然遺産登録を控え、大きな転換期を迎えた奄美。案内人の島人たちが観光振興の鍵を握っている。

編集・制作=南海日日新聞社