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かばんはいつも右肩?──7m歩いてわかる“偏り” 地域を健康にする「歩き方指南」とは

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Sponsored by 花王

配信期間:2017/9/15(金)〜10/14(土)

年々伸びている日本人の平均寿命。2016年の調査によると男性で80.98歳、女性では87.14歳と過去最高を記録しました。その背景には、医療の進歩とともに、日本人の健康意識の高まりが挙げられます。

手軽に取り組める健康維持の方法として、多くの人が実践しているのがウオーキング。

近年、洗剤などの日用品メーカーで知られる花王が「歩き方」の研究を行っているのをご存じでしょうか?

花王にとって一見関わりのないこの分野に参入したきっかけは、赤ちゃんのおむつ開発のために使っていた動作解析技術でした。

赤ちゃんのおむつ開発から見えた「質の高い」歩行のすがた

赤ちゃんはどのようにして歩いているのか、おむつをつけた状態でも歩行の妨げにならないようにするにはどうすればいいのか──。開発に欠かせないノウハウを蓄積するため、花王は歩行解析の研究を始めました。

パーソナルヘルスケア研究所の仁木佳文さんはこう振り返ります。

「人間の歩行は、幼児の頃のよちよち歩きから、足と足の間隔が広いガニ股歩きになって、いわゆる大人のようなまっすぐとした歩き方になり、年を経るごとにまたガニ股に戻るという経過をたどります。そのため、歩行解析においては幼児と高齢者が同じステージとして、引き合いに出されることが多く、赤ちゃんの歩行解析で蓄積したノウハウは、高齢者でも生かせるのではないかと考えました」

仁木さん(左)、同研究所の須藤元喜さん(右)

そこで、歩行パターンを解析するシステム「ヘルスウォーク」を開発。幼児だけでなく高齢者までおよそ2万人以上の歩行データを計測し、そのデータを可視化する研究を進めました。

わずか7mの歩行でわかる、その人だけの「歩き方のクセ」

「『ヘルスウォーク』は、7m歩いてもらうだけで、その人の歩き方の癖がわかる歩行解析システムです。2万人以上の歩行を解析した結果、左右どちらかだけを多く使うスポーツをやっていたり、かばんを片方だけで持つなどの生活習慣、それぞれの癖などが蓄積していくことで、高齢に近づくにつれ、その左右差が大きくなっていたことが分かりました」(須藤さん)

歩き方のクセをさまざまな角度から解析し、データ化していく

他にも、膝に痛みのある人は歩幅が減少して歩行角度が大きくなる、腰が痛い人は歩幅の減少と歩隔の増大といった特徴も発見されました。研究を進める中で、健康維持のためには、歩数の量や時間だけではなく、速度や歩き方も大切だということがわかったといいます。

正常な歩き方

歩隔が広すぎる歩き方

右に寄っている歩き方

歩幅、ピッチ、左右差が「質の高い歩行」のカギ

2万人以上の歩行研究を通して開発したのは、歩行支援プログラム「ホコタッチ」。

利用者は毎日「活動量計」を身につけ、日常の歩行データを収集。定期的に歩行年齢や日々の歩数、速度などを確認する結果シートを印刷し、日々の健康維持の目安にします。

パソコンがあれば活動量の印刷は可能なため、どんな場所でも「ホコタッチスポット」に

「加齢とともに歩行のスピードは遅くなり、歩幅も短くなる一方で、ピッチは上がります。つまり同じスピード、距離を保とうとするために足の回転が早くなるのです。身体能力が下がるとこの特徴は顕著になり、小走りのような状態に。しかしこれは質の高い歩行とは言えません」(須藤さん)

花王が考える「質の高い歩行」とは、歩幅とピッチの関係に加えて、左右差が限りなく少ないこと。身長や足の長さに基づく適切な歩幅かどうか、左右どちらかだけに負荷がかかっていないかどうか、など複数の「質の高い歩行」のための指標を示してくれるといいます。

具体的に気をつけるべき点は、背筋を伸ばし、つま先から蹴り出してかかとで着地すること。全身の筋肉を意識することで、より健康効果が望めるそうです。

健康な歩き方のポイント

普段より「足を10センチ前に出す」を意識し、背筋を伸ばし目線は前方にして歩くのがポイントです。

「次につながるハードル設定」でモチベーション維持を

とはいえ、1日2000~3000歩程度しか歩かない人に「毎日1万歩を目指しましょう』と突然提案するのはハードルが高いもの。人工関節が入っていたり、痛みがある人ならば1万歩も歩くことはかえってリスクを増す恐れもあります。そのため、ホコタッチでは「その人が歩いている歩数』が目標として設定されます。つまり、普段2000~3000歩の間で活動している人の目標値は3000歩。その人が4000歩歩けたら目標値は4000歩に上がるのです。

「健康維持のためには1日12000歩以上歩いても効果は変わらないという研究があります。ですから若い方で1万、高齢者では8000歩を上限にして、歩けた歩数を目標にしています。ホコタッチでは、日々の活動にAからDまでの評価を示していますが、A判定が出るのは質と量がよかったとき。しかし、その量はそれぞれの人で違うため、4000歩歩いてA判定が出る場合もあれば、8000歩歩いてもD判定しか出ない場合もあるのです」(須藤さん)

他人との比較ではなく、「最近がんばっているかどうか」。花王が生み出した歩行支援の最も大きな特長です。

「地域住民の生きがいに」自治体と連携して広がるホコタッチ

ホコタッチは現在、自治体と連携し、地域住民の健康増進に活用され始めています。そのひとつが、愛知県の中部に位置する高浜市。4000人以上の地域住民とともに、ホコタッチによる健康増進の実証実験を進めています。

高浜市役所福祉部の磯村和志さんによると、この取り組み開始後、市の医療費が少しずつ減ってきているとのデータもあるとのこと。今後は、要介護認定と診断される年齢や人数の推移も見ていくといいます。

市が認定した「ホコタッチの達人」であり、計測結果が確認できるホコタッチスポットでもある「IT工房クリック」でパソコンの指導を行う鶴田憲康さんは、ホコタッチの活用で、行動範囲が広がったと話します。

鶴田さんはさまざまなホコタッチスポットに日々顔を出し、地域との交流を図る

「今までは自宅から目的地の往復だけだったのが、その周辺にある健康自生地(市が認定した地域交流の場や高齢者の方が出かけたくなるような場所)に立ち寄ることが増えました。現役時代は、市の活動にもほとんど参加せず、隣に誰が住んでいるかもわからないような状態でしたが、健康自生地のおかげで地域の方と交流も増え、さらにホコタッチで日々の歩行状態がわかるので、健康の維持にも役立っています」

ホコタッチの取り組みは、広報誌などで地域住民に広報。ホコタッチの達人も表彰され、広報誌に取り上げられる

花王とともに歩行測定システム「ヘルスウォーク」を開発した国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部の島田裕之部長は、「これまで運動習慣のなかった人が自発的に運動行うためには意識を変える“何か”が必要です。最も効果的な方法が『セルフモニタリング』です」と話します。

「ホコタッチの取り組みは、高齢者に運動習慣を持つこと以外に、ホコタッチスポットで地域住民との交流やコミュニティー活動が行えるという利点もあります。認知症予防には、新聞を読むなどの知的習慣を持つこと、運動習慣を持つこと、さらに社会的な活動を行うことが大切だと言われています。われわれとしても、この効果を身体機能と認知機能の両面から検証できれば、貴重な事例となり、今後の認知症予防の研究にも役立つものだと思っています」

「今後は公共施設や薬局、温泉施設などにホコタッチスポットを置き、利用者を増やしたい」と話す島田部長

「寝たきり」避けたい──高まる健康意識に向けて

「高度経済成長期以後にさまざまなものがオートメーション化されたことによって、日本人の活動量が減り『高栄養・低活動』の状態になったことで、生活習慣病やがん、認知症などにかかる人が増えてきています。そのため、最近は健康の維持に重点を置く『予防医学』の発想が広まってきています」そう話すのは、日本肥満学会副理事長の宮崎滋医師。

そうした中で最近注目が集まっているのが、「健康寿命の延伸」です。健康寿命とは、健康上の問題で制限されることなく日常生活を過ごせる期間のこと。現在、日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性が9.13年、女性が12.68年。この差が大きいほど、介護が必要だったりするなど、日常生活に制限のある不健康な期間が長いことになります。

健康を維持するため、ウオーキングや有酸素運動を習慣づける人が多く、調査や研究でその効果は証明されています。 国立循環器病研究センターの調査では、1日の歩行時間や1週間のスポーツ時間が長い人のほうが循環器病による死亡が減少。また、1日あたりの歩数が増えれば増えるほど、生活習慣病による死亡者数は減少するという関係が見られることもわかっています。

ホコタッチをはじめとする歩行研究は、花王の事業とはかけ離れているようにも見えます。しかし、生活に密着する同社の商品の陰には、脈々と受け継がれてきた研究とその志があり、その研究を形にする開発力がありました。

「今後の課題は『ものづくり』と『ことづくり』との連携です。さまざまな既存の商品と連携をして、人とのつながりや連絡のきっかけづくりをしたい。そのためにも、健康という分野から社会の役に立つ研究を行っていきたいです」(須藤さん)

ホコタッチを利用できるのはまだまだ一部地域のみ。これからも島田部長と協力しながら、多くの自治体と連携していきたいと語っていました。

「ひとりでも多くの人が、いつまでも健康でいられるように」──花王が培ってきたこの志に立ち返れば、歩行研究に至るのはむしろ当然のことなのかもしれません。

文=大場真代(QLife) 写真=花王提供、PIXTA