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地震から我が子を「守る」ために──親ができること、広がる「防災格差」を埋めるには

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Sponsored by 日本損害保険協会

配信期間:2018/3/9(金)〜4/8(日)

東日本大震災から7年。未曽有の大災害を経験したことで、人々の防災意識は確実に高まったものの、年月とともに震災や津波の脅威の記憶は薄れつつある。

しかし、災害は決して過去のものではない。政府が2017年4月に発表した「全国地震動予測地図」では、今後30年以内に地震に見舞われるエリアと、その確率が示されている。これを見ると、太平洋側においては、建物が倒壊し始めるとされる「震度6弱以上」の地震が起きる可能性がひときわ高いことがわかる。

防災に対する意識の格差は、日常的な備えに対する差につながり、それが有事における生死を分けることもある。震災の脅威を直接知らない子どもたちに、いかにして「生き延びる」ことを考えさせるべきか。防災教育の現場では、「楽しみながら学ぶ」をキーワードに、過去の被災体験を教訓として生かす取り組みが進んでいる。子どもを守るために大人にできる「防災」を考えてみよう。

地域マップ作りを通した防災教育への取り組み

三重県鳥羽市安楽島(あらしま)は、子どもたちが主体となって防災・減災への活動を行っている地域だ。安楽島子ども会(安楽島キッズ探検隊)は毎年、街の防災マップ作りを通して防災を学ぶ「ぼうさい探検隊マップコンクール」に参加することで、地域の防災力向上に取り組んでいる。

「安楽島は海に近い地域で、地震が起きれば津波が発生するリスクがあります。しかし、その際に街の人々がどれだけ適切に避難できるか、疑問がありました。高台に逃げなければいけないのに、つい自宅へ戻ってしまう人も多いのではないか。そう考えていたところに『ぼうさい探検隊マップコンクール』の募集告知を目にして、これを利用して大人も子どもも一緒に防災について学べばいいのではないかと思いついたんです」

そう語るのは、13年前から子ども会を指導している浜口敬司さん。「ぼうさい探検隊」とは、楽しみながら学べる防災教育プログラムの一つ。子どもたちが自分たちの住む街の危険な場所や安全のための施設を「探検」し、その成果をマップで表現するというものだ。マップは、防災や防犯、交通安全などさまざまなテーマでまとめられ、日本損害保険協会では毎年、全国からマップをコンクール形式で募集している。

浜口敬司さんは、13年前に自身の子どもが「安楽島子ども会」に参加していたことをきっかけに、現在まで子どもたちの指導を担う

このコンクールで安楽島子ども会は、2005年の審査員特別賞受賞以降、消防庁長官賞や文部科学大臣賞など、13年連続で入賞を果たしている。毎年、約2600もの作品が寄せられる中で、随一の受賞率を誇っているのだ。

「防災という観点で自分たちの街を歩いてみることで、危険な場所や目の行き届かない場所、安全な避難ルートなどが、改めて理解できるのではないかという狙いがありました。参加は任意で、毎年10~15人ほどの子どもが集まります。6年生をリーダー役に、マップのテーマは毎年みんなで話し合って決めています」

過去のマップ作品。津波警報が出た際に逃げるべき場所をまとめたり、地域内で防災無線がどこまで聞こえているかを調査したり、消火ホースが届く場所・届かない場所をチェックしたりするなど、さまざまな観点から「防災」を学ぶ

街歩きの際には参加賞を用意するなど、幼い子どもでも積極的に参加できるよう工夫しているという浜口さん。また、13年もの長きにわたってこの取り組みを続けてこられたのは、「できるだけ子どもたちの負担にならないよう配慮してきたからだ」という。昨今ではクラブ活動や習い事に時間を割かれる子どもも多いが、あくまで「気が向いた時の参加でOK」というハードルの低さが、子どもたちを伸び伸びと活動させることにつながっている。

調査の過程で子どもたちは、過去に大津波が到達したポイントや、町内の防災倉庫などを直接確認していく。日常生活ではなかなか意識しづらい「防災」に主眼を置いた街歩きが、有事の際に不可欠な知識を得る貴重な機会になっているという。

街歩きが地域交流のきっかけに

住み慣れた街を改めて歩いて回ることで、子どもたちが初めて気づくことも多いようだ。

「消防車や救急車が入りにくいエリアはどこかなど、自分たちが暮らす街の危険な場所を知る、いいきっかけになりました」(出口優成くん・小6)

「実際に地震が起こった時の避難ルートなど、お年寄りにももっとわかりやすく伝えなければいけないなと感じました」(大谷和真くん・小6)

調査で得られるのは、こうした実地情報だけではない。地域の人々に直接話を聞く機会も多いため、最初は内気でおとなしかった子が、やがて自ら積極的に地域住民へ話しかけるようになるなど、コミュニケーションの面での成長も見られるのだそう。

2017年は地域内のAED設置場所をマップにまとめた。「調査の過程では、普段接する機会のないお年寄りから話を聞く機会が生まれ、思いがけない交流が生まれました。これは防災教育のうれしい副産物でしたね」(浜口さん)

安楽島地区では、活動を通して培われた視点を下の世代に脈々と伝え、今後もできる限り長くこの活動を続けていきたいという。

「来年以降、下の学年の子たちがマップ作りをするときも、地域の安全を第一に考え、誰が見てもわかりやすいものを作っていってほしいです」(鈴木舶くん・小6)

「私たちが作ったマップを見て、地域の人々が危険な場所と安全な場所を知り、それによって災害時に助かる命があればうれしいですね」(戸川花音さん・小6)

親子で学びたい災害対策

親子で防災意識を高める取り組みもある。愛知県・名古屋大学の敷地内に併設された「減災館」のセンター長を務める名古屋大学教授の福和伸夫さんは、次のように話す。

1957年、愛知県名古屋市出身。名古屋大学大学院工学研究科修了。建設会社勤務を経て、91年に同大学工学部助教授に就任。2012年から現職。専門は建築耐震工学

「誰もが今すぐできる対策といえば、家具を固定することや食料の備蓄を整えること。ところが、これほど簡単な対策を、多くの人が後回しにしてしまっているのが現実です。だから私は、親子で参加する防災関係の催しがあると、必ず皆さんに言うんです。『今日、家に帰ったらすぐに、家具を固定してくださいね』と。子どもの前で約束させれば、親は動かざるを得ません。その意味では、子どもを持つ家庭は、一緒に防災を学び、取り組むチャンスに恵まれていると言えるでしょう」

減災館の外観。産学官民が連携して減災社会の実現を目指す研究拠点として、2014年に設立。災害発生のメカニズムや予想される被害などを、豊富なビジュアルと体験設備で学べる

実際、2018年1月に発表された内閣府世論調査では、災害被害の具体的イメージとして8割以上が「地震」を挙げながら、「食料や飲料水、日用品などを準備している」「家具・家電などを固定し、転倒・落下・移動を防止している」と答えた人は4割台にとどまる。また、4割の人が1~2年の間に家族や身近な人と災害について話し合ったことが「ない」と回答し、防災意識の希薄さが浮き彫りになった。

こうした現状を憂いて、願わくば近隣住民同士が日常的に「どうやって耐震対策している?」と話題にするレベルにまで引き上げたいのだと、福和さんは語る。そのため、減災館では体感型の教材を使って、親子が自ら興味を持って学べるような場づくりを意識している。

館内には、地震の揺れの周期を体感できるロープや、震災時の高層ビルの揺れ方を実演する模型、南海トラフ巨大地震で予測される津波の高さを示した垂れ幕など、多くの教材を展示する

「実践的な減災に取り組むには、『知る』だけではなく、できるだけ身をもって『納得』してもらわなければなりません。減災館が体感型の教材を多くそろえているのはそのためです」

「地域愛」から始まる防災・減災への取り組み

こうした防災・減災への意識を高めるキーワードの1つは、「地域愛」だと福和さんは強調する。

「減災館では、入口を入ってすぐのエントランスに、自分の出身地をマーキングするための日本地図を貼り出しています。これは皆さんに、自分の出身地に赤いシールを貼ってもらうためのツールで、つまりは自分の故郷をあらためて意識してほしいということ。本当に守りたい場所や家族の存在があれば、どうすれば生き延びることができるか、もっと真剣に考えられるはずだからです」

福和さん自身、1995年に発生した阪神・淡路大震災で、被災地の惨状に触れたことが、「自分はどうすれば家族を守れるか」を強く意識するきっかけになったという。

減災館の入口のすぐそばにある「あなたの出身はどこですか?」と書かれた大きな日本地図。来場者に対し、赤いシールを自分の出身地に貼り付けるよう呼びかけ、出身地への意識を高める狙いがある

防災とは、それぞれの地域が自立して向き合わなければいけない課題だ。大きな災害の対策を国任せにせず、いかに「自分事」として認識できるかが重要だと福和さんは続ける。

「私は名古屋の生まれですから、たとえば10~20年以内に必ず発生するといわれている南海トラフ巨大地震の際にも、どうにかしてこの故郷を守りたいと思っています。しかし、いざとなれば国がなんとかしてくれる、という考えは誤りです。理想はライフラインが絶たれても、しばらくの間、自分たちの力で生き延びられる備えを持つことであり、そのためにどうすればいいのかを皆さんにはもっと考えてもらいたいですね」

災害の発生を具体的にイメージできているか

有事の際に守るべきものは、命だけではない。生き延びた後も一人ひとりが生活を立て直し、地域全体が復興を果たしていくには、経済面での備えも重要だ。たとえば、東日本大震災以降、いっそう注目を集めるようになった地震保険もその手段の1つ。

「実際に地震が起きた時、自分の家や地域がどのような状況に追い込まれるか、できるかぎり具体的にイメージしておかなければなりません。自宅の耐震化や家具固定など、安全対策を怠りなくしておくだけでは十分ではないのです。被災後の生活再建に役立てるために地震保険への加入も検討しておくとよいでしょう」と福和さんは言う。

予測される南海トラフ巨大地震をはじめ、「この国には必ず大災害がやってくる」と福和さんは声を大にする。そして、そのための備えの有無は、間違いなく被災後の生活の再建にも大きく関わってくる。

もし大きな揺れや津波が自分の街を襲ったら。もし被災しながら子どもを育て、生活することになったら。そんなリアルなイメージを持つことが、本当の意味で実践的な防災・減災への取り組みにつながるといえそうだ。

取材・文=友清哲 編集・制作=ノオト 写真・撮影=栃久保誠