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なぜJR西日本は「鉄道のない島」への旅を勧めるのか 地元企業とつなぐクルーザー

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Sponsored by JR西日本

配信期間:2020/3/17(火)〜3/31(火)

鉄道もない、バスもない、乗り継いで乗り継いで旅をする「離島」。不便さも魅力のひとつだが、人気が高まっている瀬戸内の離島で、より多くの人が訪れやすくなるよう、あるプロジェクトが始まっている。それは、鉄道会社であるJR西日本が地元企業とともに「船(観光型高速クルーザー)」をつくるというもの。なぜ、鉄道のない島に鉄道会社が人を呼びたいのか。その答えを聞いた。

注目高まる瀬戸内の離島、でも

約900匹のウサギが暮らし「ウサギ島」と呼ばれる大久野島、サイクリングロードで知られる「瀬戸内しまなみ海道」など、離島はいまや、広島県の人気観光スポットのひとつだ。ニューヨーク・タイムズは「2019年行くべき52カ所の旅行先」のなかで、日本として唯一「瀬戸内の島々」を選定した。

大崎下島の御手洗地区(広島県呉市)

かつて「風待ちの港」として栄えた大崎下島の御手洗地区(広島県呉市)は、江戸時代からの面影がいまだ残る離島の観光地。本州と四国を結ぶ要所にあり、明治期まで北前船の立ち寄り地としてにぎわったほか、昭和の時代に入っても広島県の広島市や尾道市、愛媛県の松山市や今治市とを結ぶ航路などが存在し、船が頻繁に行き交っていた。「昔は『この船が来たから何時だ』と分かったので、時計がいらないほどでした」と、御手洗に暮らす村尾征之さんは話す。

御手洗で、重伝建審議会の会長などを務める村尾征之さん

現在の御手洗は、本州と橋でつながっているものの、広島市街から観光に行くには、橋で島をいくつも渡り、バスで2時間以上かかる。また御手洗まで来ても、その先へつながる交通手段は地域の生活航路で、本数や運航時間帯など、観光での利便性が高いとは言えない。

「御手洗にいまも昔ながらの風景が残っているのは、交通の便がよくない離れ島だったからでしょうね」(村尾さん)

御手洗では軒先に花を挿し、来訪者をもてなしている

古い町並みが残り、文化庁の「日本遺産」にも認定されている御手洗。交通の弱さが逆説的によかったことになるが、結局のところ交通が弱いため、その景観を生かすことが容易ではない。御手洗に来る人を増やさないと、その町並みや文化、歴史を生かす以前に、それを守っていくこと自体が難しいという現実がある。これは、瀬戸内の離島全体が抱えている課題だ。

鉄道会社が打ち出した一手は「船」だった

こうした課題に、鉄道会社のJR西日本が地元の船会社である瀬戸内海汽船(広島市)とタッグを組んで送り出すことにしたのが、島々を結ぶ新たな観光型クルーザー「SEA SPICA」だった。デザインを担当したのは、京阪神と西日本エリアを結ぶ新たな長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」といった車両、駅などを多く手掛ける川西康之さん。船のデザインは初めてだったが、鉄道関係で培った経験が生きたという。

株式会社イチバンセンの代表で建築家の川西康之さん

「お客様に、いかに船内を歩き回っていただくかを考えました。観光列車と同様、お客様に多くの“画角”を提供できれば、その移動時間は間違いなく豊かになります」

2階は屋台なども出せるフリースペース。景色を楽しんでもらうため窓側へ3度傾けられた座席、集まって会話できる大きめのテーブルなど、「移動」ではなく「旅」をするための工夫が「SEA SPICA」にはちりばめられている。

観光型クルーザー「SEA SPICA」の船内イメージ(画像提供:JR西日本)

人を集めねばならない地方の公共交通で持続可能性を高めるには、乗りものやターミナルといった「移動を支える空間」において楽しい、面白いを演出することが大切だという。そして、そこで重要なのが「地元の人に参加してもらうこと」。自分たちの住む地域にたくさんの人が訪れることを喜んでもらい、おもてなしに参加したくなる。「デザイン屋はそうした『人をつなげる場のデザイン』を問われている」と川西さんは話す。

「船」が高める新幹線の強み

なぜ、JR西日本が瀬戸内で専門外の「船(観光型高速クルーザー)」に取り組むのか。

今回JR西日本とタッグを組み、「SEA SPICA」を運航する瀬戸内海汽船はかつて、そうした観光ルートの船を瀬戸内海で運航していた。これについて同社の川渕紀和次長は、観光商品は地域外から広く集客せねばならないなか、「各地方を拠点とする船会社は営業地域が限られており、販売面で苦労しました」と話す。また「『瀬戸内海』といっても広く漠然としており、PRが難しい。かといって、個々の地域が個別に宣伝しても弱いのです」と言う。

これに対し、JR西日本 広島支社 渡壁聖太さんは「遠方のお客様に来ていただくのに、われわれの新幹線をはじめとする『鉄道』というネットワークには大きな力があります。JR西日本は人が集まる拠点となる駅も持っており、これも販売・宣伝面において強みです」と明かす。

「広島県は京阪神から遠くなく、日帰り客も多い。そこに広域周遊ルートをつくり出すことで、宿泊をともなう形での訪問客を増やすことができれば、地域での観光消費額が増えることにもなります」(渡壁さん)

新観光列車「etSETOra(エトセトラ)」のイメージ(画像提供:JR西日本)

新幹線も、沿線に新しい価値をつくり出して行かねば、輸送人員が減ってしまう。JR西日本は2018年、「地域価値の向上」をグループの中期経営計画に盛り込み、同社の主たる事業範囲内である瀬戸内エリアの活性化を目指す「せとうちパレットプロジェクト」を開始。2019年には瀬戸内海汽船、国土交通省中国運輸局と、せとうちエリアの海事観光の振興に向けた連携協定を締結。観光ルートの運航ノウハウを持つ同社と共同で海の「SEA SPICA」を就航させ、陸の新幹線、2020年秋に登場予定の新観光列車「etSETOra(エトセトラ)」などと合わせて、瀬戸内を国内外から多くの人が訪れる海陸の一大周遊ルートにすることを目指している。

紙テープと「蛍の光」の風物詩

瀬戸内の離島はいま、「SEA SPICA」によってたくさんの人が訪れること、島々がつながることへの期待にあふれている。

朝鮮通信使の資料が残る松濤園と船田孝興さん

「SEA SPICA」の運航を想定し、一般的な高速船を使って2018年と2019年に行われた試験運航で、寄港地のひとつであった下蒲刈島(広島県呉市)。そこに暮らす、かつて島の生活航路で船長をしていた船田孝興さんは、「船を出迎える習慣を、島の人はもともと持っているのではないか」と言う。

下蒲刈島は江戸時代に朝鮮通信使が立ち寄り、「そこでのおもてなしが一番だった」と表現された場所。また島で学校の先生に異動があれば、紙テープと「蛍の光」でその船を見送るのが風物詩だったそうだ。

「そうした島の文化を知って来られると、また感じていただけることがあるのではないでしょうか」(呉観光ボランティアの会 船田孝興さん)

観光型クルーザー「SEA SPICA」の外観イメージ(画像提供:JR西日本)

また御手洗地区の村尾さんは、「試験運航で御手洗へ立ち寄ったのち、リピーターになってくださった方もおり、うれしかったです。このように『SEA SPICA』をきっかけに、『今度は泊まって瀬戸内の朝日を見よう』などと思ってもらえるよう、われわれも力を合わせていければ」と「鉄道会社の船」へ期待をにじませた。

編集・制作=株式会社メディア・ヴァーグ 乗りものニュース編集部
取材・文・写真=恵 知仁(乗りものライター)
写真=アフロ